12/06/2011

エコール・デ・ボザールとリトグラフ


その存在と場所は知っていても、中々足を踏み入れることのなかった
エコール・デ・ボザール。

ひょんなことから、ここで学ぶ日本人の方々と知り合いになり、
デッサンの授業に出席したり、色々なアトリエを案内していただくという
幸運にあずかりました。

デッザンの授業に出てみて感じたのは、
素早さと、解剖学的な正確さが一番求められているということ。
考えてみれば当然かもしれないけど、もはや古代彫像の理想のプロポーションを!!
なんていう教育は行われていません。

3分、5分、10分と少しずつ時間を伸ばしながら、
まるでストレッチで徐々に身体を慣らしていくように、デッサンの授業が始まります。

正規の学生たちは、一人が一枚の黒板を割り当てられ、
制限時間の中で、実際のモデルを見ながら等身大以上のデッサンを
仕上げていくという流れ。

そして先生が気になる箇所を一言二言コメントして、
すぐに次のポーズのデッサンに移ります。

ちなみに聴講生は、自分でスケッチブックを持参して淡々と描くのみで、
直接先生が指導することはありません。

かつて一応美術部に所属していたものの、人体デッサンはおろか、
石膏デッサンすらまともにしたことがない私は、
漂う緊張感にやや呑まれつつも、
毎回どうにかこうにか澄ました顔で乗り切っています。

一度描きはじめるとやっぱり集中するものだし、
先生のコメントや説明を聞いていると、
描くことはもちろんそうだけど、見ることの訓練になっていると実感します。

何より、19世紀末〜20世紀初頭のデッサン教育と理論を研究する身として、
他でもないエコール・デ・ボザールで実践を目の当たりにできるという、
貴重な経験に感謝。


彫刻が立ち並ぶ中庭のようなホール。時々パーティが催されています。

ボナパルト通りの正面入口から。



先週は、正規の学生として学ぶ友人の言葉に甘えて、
アトリエも案内してもらいました。


先生がそれぞれかなりの広さのアトリエを持っていて、
指導学生たちはそこで伸び伸びと制作に励んでいます。


そして、絵画だけではなく版画や彫刻、フレスコ画のアトリエもあります。


今回私がお邪魔したのはリトグラフ(石版画)のアトリエ。


今まで、解説書などを読んでもいまいちピンとこなくて、
しかも「石」の版画といっても、最近ではアルミ版などで代用することが多く、
一度本物をこの目で確認してみたいと思っていたのです。


こちらが、リトグラフの刷り機。相当年季が入っていて、回すのが大変そう...。





この台の上に石版を乗せて刷ります。

そして石版たちです。本当に重くて一番小さいのでも
数センチ持ち上げるのがやっとでした...



ずらりと並んだ版や、面を平らにもどすための砂、
アラビアゴムやインクなどを実際に見て、
ボナールやルオーの美しい多色刷り版画や、
マネの素早い鉛筆の線そのままのリトグラフが制作された過程を
ようやく想像できるようになった気がします。





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