9/30/2012

パリの屋根裏部屋


1ヶ月だけ暮らしてみたパリのアパルトマンの屋根裏部屋。

今まで住んだ部屋の中で一番狭く(11㎡)、
7階(地下に降りてからまた登るので実質8階)のエレベーターなし、
階段の段数は実に149段という過酷な状況だったけど、
「屋根裏部屋」という響きには憧れるものがあったし、
フランス文学でときに舞台となる女中部屋に住んでみたのは、
きっと良い経験になったと思います。


窓からの空の眺めは屋根裏部屋の特権ですね。


外観はこんなに立派な19世紀建築。


螺旋階段、途中ふらつくこともあったけれど、愛着がわきました。


10月からは晴れてエレベーターと立派な本棚備え付けの部屋で、
カフェオレと焼きたてクロワッサンという朝食付きの快適ライフです♪

9/29/2012

ブルターニュとジャポニスム 2012


秋の深まりの感じられるようになったレンヌで
9月27日(木)から29日(土)にかけて、
シンポジウム「ジャポニスムの領域」が開催されました。

2012年にブルターニュ全域で展開されているジャポニスムをめぐる展覧会の
関連企画の一環として催されたものです。

タイトルの「Territoires[領域]」という言葉には、
画像を比較することで構図やモチーフの影響関係を探る
従来のジャポニスム研究の枠を越えて、
人々の交流や政治経済、そして何よりブルターニュの地理的な条件が
ジャポニスムという現象にいかに作用したかを問うという意図が込められています。

そのタイトルに応えるように、
日仏から参加した19人の発表者たちの研究内容は多岐に渡っていました。

沖縄那覇から渡った工芸品や、憚りの椅子、春画、
アジアのアレゴリーに見る日本人娘のイメージ浸透の経緯、
フランスにおける日本の木版およびその技術の普及、
パリの日仏協会が19世紀末から20世紀初頭に果たした役割、
フランスで本の装丁に用いられた日本の千代紙など
これまであまり語られることのなかったジャンルに踏み込んだ発表。

フィリップ・ビュルティのコレクション目録調査、
美術批評家ギュスターヴ・ジェフロワによる日本美術についての言説といった
当時の美術批評家たちが残した資料の調査研究。

フランスの産業美術のひとつである陶器への日本美術の影響、
伊万里焼の流布といった陶器のジャポニスム。

また、フランスだけでなくアメリカの室内装飾におけるジャポニスム。

そして、日本人研究者により紹介された

河鍋暁斎とフェリックス・レガメの交流、暁斎の作品イメージの伝播、
ブルターニュBréhat島で制作に励んだ久米桂一郎の画業。

さらに、日本の文学作品、とりわけ俳句の受容にまで及んだ、
ジャポニスム研究の射程の広さを証明する濃密な3日間でした。

ジャポニスム研究の第一人者ゲイブリエル・ワイズバーグ氏は
Robert Blumが日本で撮影した写真とそれを元にした水彩・絵画作品についてのご発表。



学問の領域として純粋に刺激を受けながらも、
フランス近代美術を専攻する日本人研究家にとって、
ジャポニスムがほとんどオブセッションとしてつきまとうような
感覚にも襲われた3日間でした。

大学構内ではシンポジウムの開催に合わせて
日本の近現代写真家たちの展覧会がオープニングを迎えていました。
レンヌで植田正治や奈良原一高を見られるとは。



ところでブルターニュといえば日本でもお馴染みガレットが郷土料理です。
3日間お昼は息抜きも兼ねてレンヌ大学から程近いSaint Anne広場でガレットランチ。



白カビチーズやシードルのジュレ、生ハムなどパリとはひと味違うガレットの具材たち。
3日間食べても飽きませんでした。



ブルターニュの玄関口レンヌは、文化施設も充実しています。
調べてみると、フランス国内で初めて地方の公的資金を投入した
現代美術館を建設したのがブルターニュだそうです。

中に入る時間はなかったけれど、現代美術館や図書館が一緒になった複合施設の
まわりには人がたくさん集まっていました。



レンヌ美術館では、浮世絵と着物の展覧会を開催中。
姉妹都市の仙台から贈られた着物と、
日本人医師のコレクターによって寄贈された浮世絵。


改修工事を経て生まれ変わったレンヌ美術館は、
7年前に訪れたときの面影もなく、
色鮮やかな壁の新しい装いになっていました。



小さな壺の展示が可愛かった。



驚異の部屋を彷彿とさせつつ、現代の照明技術を駆使した展示空間。


絵画展示室の壁紙もカラフル。紫色はなかなか勇気がいる色だと思います。




レンヌ美術館が誇る代表作のひとつは、こちらルーベンスの《虎狩り》。
作品自体が大きいうえに、画面全体に動きが満ちていて、
実際に見ると非常に迫力があります。



もちろんゴーギャンやナビ派の作品も。


現代美術のコレクションも充実していました。





最終日、美術館を出るとすっかり晴れ渡っていたので、
7年前の記憶をたよりに街を散策。


そして見つけました、おいしいクレープ屋さんのある通りを。
名前は全然覚えていなかったのですが、坂道を登ったところにある
石畳の道という地形だけは頭のなかにぼんやりと浮かんでいました。


昔来たときは夜だったので、内装までははっきり覚えていませんが、
お店の大きさといい、雰囲気といい、間違いありません。




クレープに、ブルターニュ名物キャラメル・サレ、
そして自家製のチョコレートと生クリームという夢の競演。
ほっぺが落ちそうなくらいおいしかったです。





3日間の滞在中4枚目のクレープをおいしく食べ終え、
日が傾きかけた広場を抜けて帰路につきました。



9/26/2012

オペラ・ガルニエ 20世紀の舞台衣裳展


オペラ・ガルニエで開催されている
20世紀のパリオペラ座における舞台衣裳の展覧会、
L'Etoffe de la modernité, Le Costume de scène à l'Opéra de Paris au XXe siècle
マリヴォーさんと見に行ってきました。

展覧会の入口から降りていくと、階段の下やテラスに衣裳が展示されています。


オランジュリーでのドビュッシー展に続き、ここでも使われていた黒い網。
保護のためとはいえ、これは見ることの妨げでしかないと思うのですが...



楽譜を一枚一枚重ねた衣裳。

初めて見ることができたシャガールの天井画。
みずみずしい色彩と黄金の縁取り、シャンデリアの白い光が見事に調和していました。

ニジンスキーの「牧神の午後」の衣裳で有名なレオン・バクストのデザイン。

画家ジョルジョ・デ・キリコの衣裳デッサン。
他にも、モーリス・ドニやフェルナン・レジェ、ジャン・コクトーら
多くの画家たちがオペラ座の衣裳を手がけています。

現代では、イヴ・サンローランやクリスチャン・ラクロワ、高田賢三ら
オートクチュールのデザイナーたちの衣裳が展示されていました。



9/24/2012

布団と草むら


ポチは確か歯並びがちょっと悪いとかでブリーダーさんの元に
残されていたところを、うちにもらわれて来たんですが、
歯並びなんて何のその、これほどまでに愛くるしい柴犬は
世間広しといえどもそんなにいないんじゃないでしょうか。


布団でごろごろ、くつろぎ中の姿は無防備の極み。

これほどまでの脱力感を醸し出されると、見ている方もふにゃっとなります。

白目をむいていても......どことなく愛嬌があるし。


そして散歩に出かけ、おやつをもらうときのこの笑顔。


渾身のおねだり、これには敵いません。

ちょうだい、ちょうだいと言わんばかりに前足を上下に振って、ジャーキーをゲット。

いつも可愛い可愛いと褒められているから、
きっと自分が可愛いことも分かっているに違いない。

夏も終わり、もうすぐ全身もこもこになってさらに可愛さが増す季節。

9/23/2012

ヴェルサイユ宮殿現代美術展2012 Joana Vasconcelos


ヴェルサイユ宮殿で2008年から毎年開催されている現代美術展。
ジェフ・クーンズ、村上隆、クサヴィエ・ヴェイヤン、ベルナール・ヴェネときて
今年はパリ生まれのポーランド人女性アーティスト、ジョアナ・ヴァスコンセロス。

噂に聞いていたヴェルサイユ宮殿と現代美術のコラボを実際に見るために
曇り空の下ひとりヴェルサイユへ。

9月も終わりに近かったけど、相変わらず観光客でごったがえしていました。


エントランスを入るとすぐ、階段上空にMary Poppins (2010)。

庭では大噴水ショーなるものが催されていました。

庭園の池のなかに立つ青いオブジェもヴァスコンセロスの作品Blue Champagne (2012)。
夜には妖しく光るようです。


ヴェルサイユ宮殿は確か2回目なんですが、
久々に見たヘラクレスの間の天井画に心奪われました。

戦争の間には、Coração Independente Preto (2006)。
レース編みのように繊細な黒いハート型のオブジェがゆっくりと回転していました。

鏡の間の奥にはMarilyn (2011)。
写真では分かりにくいですが、実はこの靴すべて鍋でできています。


平和の間にはCoração Independente Vermelho (2005)。
先ほどの戦争の間と対になっています。


続いて女王の間に置かれたのはPerruque[ヘヤーピース] (2012)。

その名の通り、突起部分には様々な種類の髪の毛が... 


来場者の笑いを誘っていたLe Dauphin et La Dauphine [王太子と王太子姫](2012).
2匹の海老が白と黒のレースを身に纏って向かい合うという珍妙な作品。



Gardes[ガードマン](2012)でも、2匹の獅子がレースで覆われていました。


フランス軍の歴史を描いた絵画と軍人たちの彫像が並ぶ戦闘の間に入ると、
Royal Valkyrie (2012)が迎えてくれます。
タイトルのワルキューレとは、北欧神話に登場する女神。
戦士した勇士を天上の宮殿ヴァルハラへと導く役目を担っています。

戦闘の間の中央部分にはGolden Valkyrie (2012)。



奥にはValquiria Enxoval (2009)とワルキューレをモチーフにした巨大オブジェが続きます。

1830年の間には、ヘリコプターならぬLilicoptère (2012)。
黄金色の機体がピンクの羽根で覆われています。

 出口へと通じる階段には、ステンドグラス作品、Vitrail (2012)。


布やレース、ヘアーピースや鍋といった、
女性の労働を喚起する素材を使った巨大インスタレーションの数々。
豪華絢爛な装飾が渦巻くヴェルサイユ宮殿で、
存在感のある見事な展示でした。

庭園入口には、Pavillon de Vin (2011)とPavillon de Thé (2012)。
ワインと紅茶のパヴィリオン。おとぎ話がはじまりそう。

灰色の雲にうっすらとにじむ夕焼けが綺麗でした。